富士吉田に新しい風を吹き込むスペシャルティコーヒーのカフェ 富士吉田に新しい風を吹き込むスペシャルティコーヒーのカフェ

富士吉田に新しい風を吹き込む

スペシャルティコーヒーのカフェ

FUUTO COFFEE & BAKE SHOP

カフェ

和菓子の世界とカフェカルチャーの修行を経て、実家のシャッターを再び拓く。

富士吉田の中心市街地、月江寺商店街にオープンしたカフェ、FUUTO(フート)。ここはかつて街の人に愛されたお豆腐屋さんでした。和菓子とカフェの修行を積んで帰ってきた息子の梶原正裕さんが、閉店した豆腐屋のシャッターを再び開き、いま、富士吉田に新しい風を送り込んでいます。コーヒーの人気はもちろん、どら焼きやレモンケーキなど、開店早々からさまざまなメニューが話題になっているFUUTO。梶原さんこだわりのコーヒーとお菓子について、お話を伺いました。

梶原正裕

梶原正裕

FUUTO COFFEE & BAKE SHOP | カフェ

コーヒーの職人になって帰ってきた地元の街。シャッターが閉まる商店街をもう一度盛り上げたい。

街の人たちに愛された梶原豆腐店がカフェに大変身しましたね!梶原さんは東京のカフェでお仕事をされていたと伺っておりますが、この街に戻ってきてご自身のお店をオープンするに至った経緯をお伺いさせてください!

高校の頃に将来のことを考えていて、実家が自営業だったこともあって、手に職をつけたいなと思いました。父は豆腐屋ですが、その前は洋食のコックをやっていたそうで、おじいさんから家を継いで欲しいと言われ、夢を諦めて戻ってきたそうです。その話を聞いて、自分が父の夢を継いでやろう、という気持ちが生まれ、料理人を目指そうと思ったのですが、食のアレルギーが多かったので、パティシエの専門学校に進みました。専門学校では、周りと違う道に進みたくて、洋菓子でなく和菓子を専攻し、そのまま和菓子屋に就職することになりました。

和菓子屋は東京の会社で基礎を学び、その後もう一社、滋賀の会社では、どら焼きを学びました。和菓子の世界で働いている時に、先輩に東京のカフェにつれていってもらったことがあって、「こんなおしゃれな世界があるのかと、いつかは自分もこういうお店を開きたい」と思ったのですが、せっかく和菓子の世界に入ったので、10年は頑張ろうと決めて、30歳手前になった時に、将来的にやってみたかったカフェの道に進みました。

千駄ヶ谷にあるインテリアを中心に複合領域で事業をやっている会社があるのですが、そこの飲食部門に転職してカフェの基本を学び、数年経つと、コーヒースタンドの店長をやらせてもらったり、最終的には3店舗のマネージャーも経験することができました。結局13年間、その会社でお世話になったのですが、コロナの時代になって、そろそろ東京を出ようと思い、色々と物件を探しまわったのですが、ピンと来る場所に出会えず、気晴らしに帰ってきた富士吉田の富士山をみて、「やっぱりこの街からみる富士山の景色は違うな」と感じ、この町でお店を開くことにしました。

慣れ親しんだ地元とはいえ、東京のど真ん中から、下吉田に戻ってきて、さらにお店を開くとなると、色々心配ごともあったかと思いますが…。

下吉田でお店をやる上で、集客の心配は大きかったです。実際、観光客の多い、上吉田やバイパスでのオープンも考えてみました。
ただ、自分が今いるこのお店の前の通りの月江寺商店街や、西裏という地域の賑わいを小さいながら覚えていて。この辺は全部お店があって、朝から晩まで人が行き交っていたのが当たり前でした。それが、僕が大人になると、帰ってくるたびに、お店が閉まって、朽ちて、更地になっていく様子が衝撃的でした。「街ってこんなに短い期間でこんなに変わってしまうんだな」って。それで、微力だけど、自分がここでお店を開いて、人を呼べるようなものを作りたいと思いました。

浅煎りから深煎りまで幅広いスペシャルティコーヒーを用意

FUUTOには県外からもたくさん人がきているようですね、開店早々に人寄せができているところがすごいと思います。梶原さんが淹れるコーヒーについて、お話を聞かせてください。FUUTOのコーヒーは、どんなコーヒーでしょうか?

いろんなブームがある中で、僕はサードウェーブが騒がれてから、コーヒーを覚え始めました。「マスカットのような」とか「桃のような」とか、スペシャルティコーヒーの共通言語があるのですが、それって実際にコーヒーを飲んでみても伝わらないことも多く、あまり難しい説明をしないようにしています。お客さんの好みはそれぞれだと思うので、幅広い焙煎を用意しておいて、会話をしながら豆を選んであげる、シンプルにそれだけです。

|エスプレッソ系のメニューも充実。色んな味わいを楽しめる。

 

僕のコーヒーへの考え方として、極力ネガティブを削る、ということを大切にしています。例えば、良い部分と悪い部分があって、悪い部分には目を瞑って良いところを伸ばす、という考え方もあれば、徹底的に悪いところを消す、という考え方があると思います。僕の場合は後者で、すごく良いところがなくても、悪いところは一切ない、というものを作りたい。飲んでいたらいつの間にか飲みきっている、そんなコーヒーを目指しています。

ネガティブを削る、というのは、えぐみなどの後味を、取り除くということでしょうか?それはどうやって調整できるのですか?

コーヒーの味は焙煎でほぼ全て決まりますが、うちは仕入れだから焙煎の調節はできないので、仕入れた素材の状況をみて、「この豆だったら、こういう挽き目でやろう」とか、そんな風に毎日、コーヒーの味を調整しています。

梶原さんが愛用しているコーヒーの道具

 

「このコーヒーだからこのお菓子」。ベストマッチを探して作られるスイーツメニュー

コーヒーの味の定評もさることながら「FUUTOといえば、どら焼き」と言われておりますが、和菓子とコーヒーの組み合わせについてはどんな考えがありますか?

前の会社のお店でも、仕入れたどら焼きをコーヒーと一緒に出していたのですが、ある方から「どらやきとコーヒーって合わないわけじゃないけど、ベストマッチじゃない。」って話をされたんです。それからは「このコーヒーだから、このお菓子があるんだよ」って言えるような、ベストマッチなものを作りたい、と思うようになりました。
FUUTOのどら焼きはコーヒーを意識して、甘さ控えめ、水分量を多めに、しっとり仕上げています。乾いてモサモサしたものを、コーヒーで流し込まれるのが嫌だなと思って 笑 レモンケーキもそうで、あまり甘くすると、口の中に残った後味をコーヒーで、流し込まれてしまいます(苦笑)

それから、和菓子は引き算だと思っています。素材の良さをどれだけだせるか、つきつめていかないといけない。逆に、洋菓子は重ねていく、いろんなクリームとか味を重ねて一つの味を作る、という感じでしょうか。
和菓子は余計なものを抜いていって、できるだけシンプルに、最終的には素材の味だけが際立つ。そういう考え方です。その辺がコーヒーと繋がっていると思っています。

無駄をなくす。極力素材のもっている特徴を出す、これが僕にとって和菓子とコーヒーの共通点です。

| 甘さ控えめのFuuto特製レモンケーキ。ハンドドリップコーヒーと相性抜群。

 


| 種類豊富なケーキやパンは早い時間に売り切れてしまうのでお早めに。

明るくて居心地のよい空間づくり、お客さん同士が自然に挨拶をするようなお店。

最近、下吉田は昭和レトロと言われて、それを求めて街歩きに来られる方も増えてきたのですが、FUUTOのインテリアは現代的というか海外的というか、下吉田では新しい流れかなと感じます。FUUTOのデザインはどんなコンセプトで作られたのでしょう?

お店を作る時、アメリカの西海岸のカフェみたいな、スタイリッシュでかっこいい感じがよかったのですが、空間を作ってくれたインテリアチームの方々に「いくつかこんな感じ」って例を挙げたら、僕が思っていたお店のイメージと、外から見えている僕のイメージが違ったようで、僕ではそのお店の雰囲気が出ないよって言われました。それを素直に受け止めてみようとおもい、自分の感性のゴリ押しでなく、みんなの意見を聞いて進めてもらったんです。そうして出来上がったのが今のインテリアで、女性が入りやすくて明るいイメージのお店になりとても満足しています。

ロゴマークについては、人の顔が向き合ってコーヒーの形になっています。かっこよすぎない、温かみのあるものを目指して、小豆色のカラーは、コーヒーや、あんこの色味でもあります。おいしくてやさしい色。今は一緒にきたお客さん同士が会話をする場所ですが、いずれは、年齢も関係なく、それぞれやってきたお客さん同士が挨拶しあうような場所になったらいいなと思います。

カフェカルチャーを富士吉田で身近な存在に。

先日、東京からお菓子屋さんを呼んでポップアップのイベントをされていたようですが、今後もFUUTOではいろんなイベントが行われていくのでしょうか?FUUTOの展望について教えてください。

はい、できれば今度は、地元の人を呼んでポップアップもやってみたいです。現状、地元の人よりも県外から足を伸ばして来てくれる方が多いのですが、イベントをちょこちょこ開催して、地域の人が「なんかやってるな」と思って立ち寄って欲しいです。

あとは、せっかく外に出て、吉田にない世界を色々見て戻ってきたので、僕が東京やさまざまな場所で受けた刺激をこの場所に持って帰ってきたいと思いました。このお店の活動が、少しでも地元の若い子たちにとって良い刺激になればと思っています。そうして、ゆくゆくは地域で雇用も生みたいなと考えています。若い人が働ける場所にしていきたいですね。これからきっとこの地域はカフェが増えると思いますが、「カフェではたらきたい」という方が、わざわざ東京にいかずに、ここで働くような未来がくればいいな、と思っています。

最後に、この西裏地区は市や地域の事業者が一丸となって夜の飲み屋街を盛り上げてくださっているので、僕は昼間に営業するお店として、少しでも昼間の西裏に遊びに来る人が増えるように頑張りたいなと思っています。

 

近年、惜しまれながらも高齢化と後継者不足でシャッターが閉まるお店が増えていく中で、梶原さんのUターンにより新たな息吹を吹き返した梶原豆腐店、あらため、カフェ FUUTO。コーヒーやお菓子の味はもちろん、店主の梶原さんの人柄が作り出す穏やかな雰囲気がとても居心地の良い素敵なお店でした。昼間の下吉田の景色が徐々に賑わいを取り戻しつつある今日このごろ、みなさんぜひ遊びにお越しください。

企画|シーダ design firm

取材|杉原悠太

撮影|杉原悠太

 

ー FUTTO COFFEE & BAKE SHOP ー

Access

住所:富士吉田市下吉田3丁目12−3

電話番号:0555-72-8380

営業時間:10:00〜18:00

定休日:月、火