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#06西裏市場2025_レポート第二弾

 

こんにちは!

西裏市場の会場装飾を担当しました、運営事務局の小林です。

今年の西裏市場の装飾では、昭和時代の西裏の街並みをテーマにし、街に残る昭和のデザインを復刻することに取り組みました。かつて西裏で営業していたお店の古い看板やその文字を参考にし、会場内の装飾を制作しています。

第二弾のレポートでは、会場制作を通して、デザイナーとして考えたこと、感じたことをご紹介できればと思います。

 

装飾と街の景観


①メインゲート・ガーランド

西裏通りの入口に設置したメインゲートは、西裏の飲食店や路地裏にある看板からインスピレーションを得てデザインを考えました。イベントで楽しめるグルメやコンテンツ、そして、西裏市場のテーマ「おいしいものとまち歩きを楽しむマーケットイベント」にちなんだ「歩」「笑」「食」「飲」などの言葉を、散りばめています。

ガーランドには、かつて西裏の全盛期に営業していた飲食店の看板デザインを復刻し、さらに今回参加いただいた出店者の屋号やロゴも取り入れました。全盛期には200軒を超える店舗が軒を連ね、屋号がひしめき合っていたという当時のにぎわいを、ガーランド装飾を通じて再現することを目指しました。

 

②街の語り板

また、西裏地区の数箇所に『街の語り板』というコンテンツを設置しました。地域の方々から伺ったエピソードや物語を紹介する看板で、西裏のまちに息づく歴史を伝える試みです。
かつて織物産業で賑わった富士吉田市の中でも、西裏地区は特に活気があり、県内外から多くの業者や商人が訪れる関東屈指の繁華街として栄えていました。そうした地域の記憶や逸話は、今もなお街の随所に残っています。
今回は試験的に4つの語り板を設置しましたが、今後はエピソードの数を増やし、常設展示として展開していくことを検討しています。

 

③のぼり台

西裏通りに休憩用のベンチをいくつか設置しましたが、その中のいくつかのベンチには、「登ってよし、座ってよし」をテーマに「のぼり台」と命名した台座を設置しました。少し高い位置からイベントの景色をみてもらったり、通りの先に見える富士山を眺望する台座としてデザインしました。

イベントでは様々な什器を制作しますが、通年で使用するものではないため、解体して保管できることや再利用可能であることが重要なポイントとなります。特にのぼり台のような大型什器は、移動や保管が難しいため、解体しやすい構造を考慮し、今回はパレットを活用して制作しました。パレットは地元の事業者の方からお貸しいただいたもので、こうした地域との連携によって会場装飾を形にできたことを、大変ありがたく感じています。

 

④休憩スペース

今回、西裏通りの中央に手作りの長テーブルを設けました。ひとつの長いテーブルを用意することで、家族や友人同士に限らず、初対面の方々も同じテーブルを囲んで、交流のきっかけになればと思い、空間をつくりました。さらに、そうした賑わいの中に設置することで、リラックスしすぎず、席の回転も早くなると考えました。

また、賑やかな雰囲気を演出するために、休憩スペースの雨対策としてテントを配置しましたが、西裏には昭和の時代に作られた日除テントが多くのこっていることから、西裏らしい縦縞のテントを選びました。また、テントの難点として富士山を隠してしまうことがあり、休憩スペースとテントの位置をなるべく富士山から遠い場所に設置しました。

 

街と人をつなぐ空間づくり

 

初めて西裏を訪れた人々の目に、地域の街並みがどのように映ったのか、また普段から来られている方々がこうしたイベントの特別な雰囲気を通じて何か新しい発見があっただろうか、など、イベントを振り返りながら色々と考えています。

地域に根ざしたイベントのデザインに携わる中で、日常の風景に新たな意味や魅力を見出すきっかけをつくることは、私たちにとって重要な課題であり、挑戦です。

街の魅力を丁寧に掘り起こし、来場者や地域の人々に伝わるかたちで表現できたとき、街と人との新たなつながりが生まれるのではないかと思います。

普段は夜の街として賑わう西裏地区。そんな場所でイベントを行うとなれば、ビアガーデンやナイトマーケットといった発想が真っ先に浮かびます。しかし「西裏市場」では、あえて昼の時間帯に開催することで、「昼の西裏」という新たな表情を引き出すことに挑戦しています。

私たちにとっても、夜の印象が強いこのエリアにおいて、昼の空間演出を考えるのはアプローチがまったく異なり、毎回試行錯誤の連続です。今回は、西裏に残るレトロな看板のフォントや、かつて営業していた店舗の面影からインスピレーションを得て、装飾デザインに取り組みました。今後は、昼の西裏が持つ魅力をさらに掘り下げながら、この街ならではの風景や空気感を活かした新たな表現を提案していければと考えています。

また、次回、西裏市場で皆さんとお会いできることを楽しみにしています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回は、西裏市場の出店者とエリアについて公開します。

小林和泉

西裏市場会場装飾担当

静岡県出身。富士吉田市への移住をきっかけに、デザインと企画の会社「シーダ株式会社」に入社。グラフィックデザイナーとして様々な媒体の制作に携わるほか、市内イベントの企画・運営・制作等を担当。