愛と真心をこめておもてなし喫茶檸檬がリニューアル 愛と真心をこめておもてなし喫茶檸檬がリニューアル

愛と真心をこめておもてなし

喫茶檸檬がリニューアル

喫茶檸檬

喫茶店

富士吉田にやってきた元気な3人娘が
地域の人々と繋がり、街の空気が変わっていく。

2021年9月、本町通りの空き店舗数軒をリニューアルして新しいお店がオープンしました。アートディレクターの千原徹也さんのプロデュースによる「喫茶檸檬」、渋谷と富士吉田を繋ぎ、カルチャーとデザインを発信する喫茶店として開店から約1年、町外からもたくさんの人々が訪れました。

「喫茶檸檬」といえば「檸檬拉麺」や「富士おじや」が注目メニューでしたが、今回メニューを一新して「サンドウィッチ」や「ファウンテン」など、なんだか懐かしい昭和の気配が。さて、新しい喫茶檸檬はどんなお店に変わったのでしょうか。お店を運営する3人娘のインタビューにいってきました。

森脇夕月/岸彩夏/大荒里菜

森脇夕月/岸彩夏/大荒里菜

喫茶檸檬 | 喫茶店

店長というポジションはなく、お互いの得意分野を活かしながらお店を運営しています。

夕月さん

もともと私は東京の本社でデザイナーとして働いていました。そんな中、富士吉田市から会社にカフェ運営の話がきて、代表から「行ってみない?」と誘われたんです。実家も出たことのない私でしたが、もともと飲食に興味があったのと、新天地での活動に期待を膨らませて決心しました。

大荒さん

私は徳島出身で、地元の友達がれもんらいふデザイン塾に参加していて、れもんらいふという会社に興味を持っていたのですが、ちょうど喫茶檸檬の開店に向けて求人が出ていたので、思い切って応募しました。自分は大学で心理学を勉強していたので、デザイン会社への就職だったら志望していなかったと思いますが、飲食店のスタッフということで、自分でも何か活かせることがあるんじゃないかと思いました。

岸さん

千葉県出身で、夕月と同じ女子美の短大に通っていました。学校ではテキスタイルを専攻していて、染めや織りなどを勉強していました。卒業後、一度フリーターになったのですが、色々これからの人生について考えていたところ、夕月のインスタで社員募集の告知をみて、応募しました。

夕月さん

私たちは去年の夏から一緒に働きはじめて、料理研修、備品集め、お店作りで資料集めたり、リモートワークをしたり。お店が始まってからはみんなこの街に移住してきて、今は3人で一緒に住んでいます。職場も家も一緒で1年間ずっとピッタリくっついて暮らしてきたので、言葉にはできない一体感が生まれています(笑)。そんな中で、自然に3人の向き不向きが見えるようになりました。

大荒さん

私は人とお話をすることが好きなので、主に接客を担当しています。

夕月さん

私は広報担当。絵を描いたりデザインすることが好きなので、喫茶檸檬のメニューやお店のイメージをビジュアルにして発信しています。

岸さん

私は力仕事、背丈も他の二人に比べて高いので、力仕事や重たい荷物の移動、買い出しなど。フランケンシュタイン的な気持ちで立ち回っています。

大荒さん・夕月さん

フランケンシュタインっていうか、守護神だよね 笑

夕月さん

そんなこんなで、生命共同体、こまったらみんなで相談。みんな強気で、それぞれの軸があるので、日々それぞれの考えを擦り合わせながら前に進んでいます。

千原さんが作ってくれた「喫茶檸檬」という舞台

夕月さん

代表の千原からは、デザイン事務所が運営している場所、ということで、本社のネットワークやスキルを活かして、デザインを共有できる場所、カルチャーとクリエイティブと地域活性というキーワードを混ぜたようなお店にしたい、そんな話をされました。

実際に、喫茶檸檬は代表のネットワークでいろんな業界の凄腕の方々の協力を得ながら立ち上がったのですが、それだけに、周りからの期待値も高くなって、私たち3人はそれを体現しきれない部分が多々ありました。それで、この1年間は、喫茶檸檬のコンテンツの精度を上げるために奮闘していて、お店の外に目を向けられていない部分もあり、なかなか街の人たちと繋がれていないなと感じていました。

大荒さん

それをどうにかしないと!と思って、思い切って代表にリニューアルのプレゼンをしました。「一度チャンスをください」って。
毎週東京の本社にいって代表とミーティングをしているのですが、そのタイミングで3人で作った渾身の資料をみせました。
そしたら、「それだけ本気なら任せてみる!ただし、あくまでも3人のお店じゃなくて、れもんらいふのお店という意識も大切に」というお話と、企画の中で細かい不足している部分を詰めていただきました。

現場で働く3人の等身大のサービスを目指して

夕月さん

このお店のインテリアデザインとしては、代表が好きなものを置いてあって、喫茶檸檬の雰囲気ができているので、そこは特に変更しなかったのですが、「お店に入りにくい、外からだとガラスが反射して中が見えないので、やっているのかわからない」という声を色々な方からいただいていたので、思い切って入り口のドアを全開にしました。また、暖簾や立て看板を出して、営業しています!っていうことをアピールするようにしたり。1日で変えられるとは思っていませんが、小さな作戦を一つ一つ実行して、もっと開いた空間にしたいなと。

大荒さん

一番大きなリニューアルはやはりメニューです。新しいメニューは私たち3人をはじめ、アルバイトのスタッフさんからも助言をいただきながら作り込んでいきました。喫茶檸檬っていうネーミングに沿ってそこの筋を通したい、自分たちの思う喫茶店ってどんなメニューかな、そんな風に考えました。サンドウィッチやファウンテンなど、潔いメニューに絞っていくことにしました。

岸さん

もちろん、昭和喫茶の雰囲気って、にわかに出せるものではないと思いますが、喫茶店の要素を少しずつ取り入れていって、喫茶店を醸し出したい、と考えています。

興味をそそられるメニューのネーミングストーリーや地域との繋がりをつくりたかった

夕月さん

メニューのネーミングについて色々とこだわりました。中でもファウンテンはいろんなアイデアが出てきて、みんなで楽しく作ったメニューです。数種類つくりましたが、それぞれ、恋愛や何か物語を連想できるようなネーミングを考えて、昭和の恋愛の歌、カラオケの字幕に出てきそうな、そういう感じをイメージして作りました。

アイデアのはじまりは、富士吉田の街を歩きながら「#富士吉田てくてくファウンテン」と名付けたドリンクを街のいろいろな場所で写真をとってインスタに載せていったら面白いんじゃないかということになって、まずは西裏の「愛人」の前で撮ってみました。ドリンクの写真やネーミングが街とつながることで、街のPRにもなるし、なんかトレンディーでいいね!という感じで構想が進み、メニュー化にいたりました。

土地柄を出したいなと思って、月光寺。本当は月江寺だけど、ちょっと物語の世界なので言葉を変えてみたり、待ち合わせの時間を十五時っていうのは、夜にするとちょっとやらしい(笑)、でも真昼でもない。となると、友達と待ち合わせる時間?最終的には、みなさんのご想像にお任せしますが(笑)。

それから、富士山の麓でちょっとファンタジーな雰囲気を出したくて「夢の五合目」なんて言葉を考えてみたり、初恋フルーツポンチは、初恋のイメージを炭酸のシュワシュワ感に掛けてみたり。

岸さん

そんなこんなで、120種類くらいのネーミングのドリンクを作って、そこから絞ったんです。3人はバラバラのセンスですが、ベースの部分が似ていたのか、実際に決めたのは15分くらい。パッパッと決まりました。ファウンテンは、テイクアウトもできるので、ぜひ町歩きのお供にいろんな場所で写真をとってもらいたいです。

これから喫茶檸檬でやっていきたいこと

大荒さん

リニューアルしてから、あらためてチラシや招待券をいろんなところに直接配りにいくようになって。直接会って話す機会が増えたら、以前よりも街の人たちとつながれているように実感しました。そうして、街の人と繋がり始めると、今までお店に来られなかった方々でも、お店を気にくださっている方々が大勢いることがわかりました。
最近は、イベントの出展にも挑戦しています。先日土曜市に出展させてもらったりして、お店の外で人に出会うことができるようになりました。

岸さん

それから、サンドウィッチやドリンクのデリバリーにも挑戦することにしました。愛と真心を込めてお届けします(笑)。このまえ早速、近所の喫茶店のおばちゃんが「お昼に届けてー」なんていってくれて持っていたりしています。

夕月さん

月毎のイベントで「〇〇を食べたらコーヒーがついてくる」みたいなキャンペーンをやりたいです。可愛いビジュアルをつくってインスタでたくさん広報しようかなと。あとは、すでに企画がすすんでいますが、映画のイベントも。それから、夏祭りもやりたいです。街の人たちと一緒にお祭りをやりたい。今年は市制祭が中止になってしまったけど、その準備をしている街の皆さんをみながら自分たちも一緒に色々作っていきたいと思いました。

大荒さん

若者にも来て欲しいです。一年この街で暮らしてみて、全然同世代との出会いがなくて、友達もあまりできなかったので、ここに同世代が集まってきてくれて友達もできたら嬉しいです。移住者も集まってきて、お互い情報交換したり良い刺激を交換できる場所を作れるんじゃないかと。

岸さん

これから若い人たちにどうやって「喫茶檸檬」のことを広めていったらよいか、考えて行きたいと思います。今度、かえる組(地元の高校生の有志団体)の人たちがポスターをつくってくれることになっていて、さっきも打ち合わせで来てもらっていました。
学生割りとかもやってみたらいいのかな。高校生にとっては少し金額が高いかもしれないし。

今回のリニューアルは、「この世代にむけて」という風に決めていなくて、女子高生でもおじちゃんやおばちゃんがきても居心地の良い、あたたかい喫茶檸檬を目指しています。

富士吉田市民としても、街と繋がっていきたい

夕月さん

私は、絵と写真、イラストを活かしたデザインが得意なので、街の地図を作るのももっとやっていきたいし、チラシのデザインの仕事も受けてみたいです。街と関わっていきながら、自分のスキルを活かしていけたらいいな。あとは料理を作る、日々の暮らしを大事にしたいです。

大荒さん

お店だけでなく、個人的にも街との繋がりを強くしていきたいです。個人としてもお店のスタッフとしても、道ゆく人たちときちんと挨拶をして、地元の人たちに受け入れてもらえるようになりたい。お店では3人慌ただしく働いていますが、お会計の時や、配膳、食器下げの時間がお客さんとお話しする貴重な時間なので、そこで色々話しかけようとしています。なるべくバタバタしているように見えないように、しっかりお客さんとコミュニケーションをとっていきたいです。

岸さん

二人が先に話してしまいましたが(笑)地域に住んでいるおじさんとかおばさんにちゃんと愛されるお店になれたらすごくうれしいなと思います。他のお店みたいに昔ながらの常連さんはいないけど、今後街の人たちから、「あの子達、応援したいな」って思ってもらえるように。
そして、ダメ出しもどんどんしてもらいたいです。自分たちが若いことも、未熟なこともわかっているので、ダメ出しもしてもらったほうが、「こちらに気をむけてもらってるな」って思えます。そういった意味でも「認めてもらえる」って自覚をもてるようになりたいですね。

夕月さん・大荒さん・岸さん

おしゃれなカフェよりも暖かい喫茶店でありたい。
そして、レモンみたいに、爽やかで楽しいムードがあればいいなって、思っています。
今後とも「喫茶檸檬」をよろしくお願いいたします!

後記–

おしゃべりが好きで、話題があっちこっちに飛びながらも、突然面白い言葉が飛び出してくる、そんな陽気な3人組。ハードルの高いお店の運営に1年間四苦八苦したようですが、それによって強いチームワークが生まれ、また、今回のリニューアルは、3人にとって等身大のお店に向かうきっかけになっているようです。彼女たちの日々の暮らしや街の人との会話の中から、メニューやイベントのアイデアや言葉が生まれ、それが千原さんの築いた「喫茶檸檬」というベースの上で、うまいこと発酵して、この街と溶け合っていく、そんな景色を想像させられるインタビューでした。

本町通りのど真ん中、街の人たちに愛されたお店の跡地をリニューアルしたこの場所で、あたらしくやってきた3人が、彼女達にしかできないクリエイティブであらたな風を吹かせて街を楽しませてもらいたいなと思いました。

 

企画|seeder design firm

取材・撮影|杉原悠太

 

ー喫茶檸檬ー

Access

住所:富士吉田市下吉田2-2-27

電話番号:0555-73-9688

営業時間:11:00〜19:00(16:00〜17:00 close)

定休日:月曜日・火曜日 ※ただし祝日は営業