喫茶店でしか味わえないコーヒーの時間があります 喫茶店でしか味わえないコーヒーの時間があります

喫茶店でしか味わえない

コーヒーの時間があります

若草珈琲

喫茶店

「10種類くらいのコーヒーを常に用意しています」。
本格喫茶「若草珈琲」で理想の一杯を楽しむ

ネオンが眩しい夜とは裏腹に、昼間は静まり返っている西裏ウエストキング通り。その一角に2020年末、朝から営業を始める喫茶店がオープンしました。

お店の名前は「若草珈琲」。もともとはコーヒーの焙煎・販売の専門店として愛されてきた名店で、西裏では若草珈琲で豆を仕入れ、コーヒーを提供している飲食店も少なくありません。

コーヒーだけでなく、ホットサンドも名物として人気を博している若草珈琲ですが、実際にどんな魅力が詰まったお店なのでしょうか。店主の天野芳明さんを訪れ、そのこだわりをうかがいました。

天野 芳明

天野 芳明

若草珈琲 | 喫茶店

好みの一杯に出会える! 10種類のコーヒーを用意するレトロな喫茶店

まだオープンから約1年ということですが、すでに老舗の雰囲気が出ていますね。

このお店は私が20代のときに自宅兼コーヒースナックとして建てたのが始まりで、今も壁と天井には当時の面影が残っています。スナックは30代半ばで一度畳んだのですが、それからもコーヒーの焙煎・販売だけはずっと続けていたんです。そのおかげで、若草珈琲もスムーズにオープンできました。

新たにオープンした若草珈琲はどんな喫茶店なのか、お店のこだわりを教えていただけますか?

若草珈琲は、ストレートからブレンドまで合わせて10種類くらいのコーヒーを常に用意しています。一般的な喫茶店では、よほどの専門店でもない限り1〜2種類くらいしか用意していませんから、やはりメニューの多さはうちのこだわりであり、大きな特徴ですね。

確かに、10種類のコーヒーが楽しめる店はあまり見かけません。でも、それだけ種類があると選ぶのにも迷ってしまいそうですね。

メニューには各コーヒー豆の特色も載せているので、好みの苦味や酸味に合ったコーヒーを選んでいただけます。もちろん、私にお声がけいただければ、お客さまの好みをお聞きしたうえでオススメもさせていただきますよ。

私もよくコーヒーを飲みますが、これと言ったこだわりはありません。そういう人には、どんなコーヒーがオススメですか?

特に好みが決まっていないお客さまには、MKブレンドやグァテマラがオススメです。MKブレンドはモカとキリマンジャロのブレンドのことで、香りが特にいいんですよ。深煎りにはしませんから、苦味も控えめです。

グァテマラはフルーティな甘みが特徴的な豆で、コーヒーを抽出しているときの香りはダージリンティーのような香りがします。逆に、苦めが好きなお客さまには、マンデリンやトラジャをオススメします。深煎りで苦味を楽しむことで、とてもコーヒーらしいコーヒーが味わえます。

カウンターに並んでいるカップも、すごく可愛くてお洒落なものばかりですね。

コーヒーカップはいただきものが多いんです。コーヒーを注文してもらえれば、コーヒーカップも好みのものを選んでいただけますから、ぜひ好みのコーヒー豆と好みのコーヒーカップで、挽きたてのコーヒーを味わってみてください。

時代を超えて復活したホットサンドも大人気! 隠し味は……

若草珈琲は午前中から営業されていて、ランチタイムに訪れるお客さんも多いそうですね。特にコーヒーとセットでホットサンドを食べられるお客さんも少なくないという話を耳にしました。

うちのホットサンドは、昔やっていたコーヒースナックの頃からの目玉商品なんですよ。うちの常連さんが、「昔、スナックで出していたホットサンドは美味しかった。若草珈琲でも出したらどうか」とアドバイスしてくれたのがキッカケで、当時のレシピのままメニュー化してみました。

今も常連さんの記憶に残っているということは、よほど美味しかったということですね。どんな味のサンドイッチなのでしょう?

ホットサンドメーカーは使わず、トーストで焼いた2枚のパンの上に具材を載せ、それを半分にカットして提供しています。中にはベーコン、目玉商品、レタス、スライストマト、それからタルタルソースを挟んでいるのですが、タルタルソースはうちの母親が作っていたレシピで仕込んでいて、まろやかさとほどよい酸味がいいアクセントになっています。

タルタルソースが入ったホットサンドというのも珍しいですね。お客さんの反応はいかがですか?

ありがたいことに評判はいいですね。結構ボリュームもありますが、女性の方でも「美味しい、美味しい」と言いながらしっかり完食してくれます。あとはチーズケーキも人気のメニューですね。

チーズケーキにも、何か作り方にこだわりがあるのでしょうか?

若草珈琲のチーズケーキは、私の妹が作っているんですよ。妹は昔からよく趣味でケーキを作っていたのですが、今では若草珈琲の目玉商品になっちゃって、ホールで買ってくれるお客さんもいるくらいです。コーヒーとの相性もバッチリですよ。

西裏で脈々と受け継がれる「若草」の看板

そもそも、天野さんがコーヒーのお店を始めようとしたキッカケは何だったのでしょう?

もともと親父が西裏で「若草」という純喫茶を営業していたんですよ。だから、小さい頃から私の日常にはコーヒーがありました。コーヒーの生豆仕を入れるときも必ず連れて行ってもらっていましたしね。コーヒーの作り方も目で見て覚えたというより、身体で覚えたといったほうが近いかもしれません。

「若草珈琲」は、お父さまが掲げていた屋号を引き継いでいたと。そのぶんプレッシャーも感じられたのでは?

若草の名前を継ぐのは、やっぱり重圧がありましたよ。当時、西裏あたりで若草を知らない人はいませんでしたから。でも、逆にそういうプレッシャーも必要なんでしょうね。お客さまへの対応ひとつとっても、気遣いができるようになったというか……そういうのは、若い頃の私にはなかなかできないことでしたから。

お父さまの影響はコーヒー作りだけでなく、営業スタイルにも及んでいるということですね。普段、若草珈琲にはどんな雰囲気のお客さんが集まっていますか?

デートで立ち寄っているような方もいますし、仕事関係の話をしている方もいます。観光客の若い女性がいらっしゃることもありますよ。ガヤガヤした雰囲気というより、比較的ゆっくりコーヒーを味わいにくるお客さまが多いかもしれません。Wi-Fiも飛ばしているので、リモートワークにもお使いいただけますよ。

天野さんとしては、どのようなお客さんに若草珈琲を利用してほしいとお考えですか?

どなたでも大歓迎です。以前、ベビーカーがあるからと入店をためらっていた夫婦もいましたが、遠慮することはありません。むしろ、私もベビーカーを運ぶお手伝いをしました。それもサービスのうちですからね。

今はコーヒーもテイクアウトしやすい環境になって、若い人の間ではコンビニの100円コーヒーも人気だそうです。もちろん、それもいいかと思いますが、ぜひ「喫茶店で、コーヒーカップを使ってゆっくりコーヒーを飲む」という時間も味わってほしいですね。

「格好つけたお店ではないので、ぜひコーヒーブレイクを楽しみにきてください」。そう笑顔で話す天野さん。ひとりでお店を訪れた場合でも積極的に話し相手になってくれるそうなので、時間に余裕ができた際はぜひ一度立ち寄ってみては? きっと、その気さくな人柄に惹かれるはずです。